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小川 達彦; 岩元 洋介
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 549, p.165255_1 - 165255_4, 2024/04
被引用回数:0原子欠陥は固体の照射効果を決定する重要な要素である。入射放射線やその二次粒子の撃力によって原子が弾き出されると、その標的物質の機械的・電気的。化学的性質が変化する。PHITSのDPAタリーのように、非弾性核反応断面積やラザフォード散乱断面積を元にした欠陥生成計算モデルは存在するが、巨視的な平均的欠陥密度の計算に用いられ、転移のように欠陥の空間的配置に影響される現象の計算には直接使えない問題があった。そこで本研究では、原子力機構が開発する汎用放射線輸送計算コードPHITSの飛跡構造解析コードITSARTを応用し、放射線による原子欠陥の空間的配置を計算した。ITSARTは原子の弾性散乱を含め、荷電粒子の反応をナノスケールで一個づつ計算することができるため、欠陥を生じるような反応を個として識別した計算が可能である。まず精度検証のためITSARTにより銅のDPA(Displacement Per Atom)を計算したところ、文献値と合致することが確認できた。同じ方法を用いて600MeVの陽子線に照射されたSiOで、欠陥の空間的配置を計算することに成功した。ユーザーはPHITSの出力を分子動力学モデルなどの後段の計算に送ることで、欠陥の更なる時間発展を計算することが可能になると期待される。
関川 卓也; 松谷 悠佑; Hwang, B.*; 石坂 優人*; 川井 弘之*; 大野 義章*; 佐藤 達彦; 甲斐 健師
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 548, p.165231_1 - 165231_6, 2024/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.19(Instruments & Instrumentation)放射線の人体に与える影響の主な原因として、遺伝情報を担うDNAの損傷が考えられている。しかし、DNAが放射線損傷によりどのような分子構造変化を示すかは十分理解されていない。DNAに放射線を照射すると様々な種類のDNA損傷が形成されることが報告されていることから、我々のグループではDNAが受ける損傷と放射線によって引き起こされる様々なパターンのイオン化の関係を調べてきた。これまでDNAを模した剛体モデルを用いた簡易な体系における解析を行っていたが、人体への影響を考える上で重要と考えられるDNAの分子構造変化を解析するためにはより詳細な計算を必要とする。そこで、本研究では分子構造に基づいて電子状態を議論できる第一原理計算ソフトウェアOpenMXを用いてDNAの分子構造変化を明らかにすることを試みた。具体的には、放射線により1電子及び2電子が電離した状況のDNAを仮定し、最安定構造、バンド分散、及び波動関数を計算した。発表では、粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて計算した放射線の線種及びエネルギーとDNAの分子構造変化の関係とともに議論する。また、放射線物理・固体物理の双方の観点から、放射線がもたらすDNAの基礎物性変化(DNA損傷の最初期過程に相当)について議論する。
Shaimerdenov, A.*; Gizatulin, Sh.*; Sairanbayev, D.*; Bugybay, Zh.*; Silnyagin, P.*; Akhanov, A.*; 冬島 拓実; 広田 憲亮; 土谷 邦彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 548, p.165235_1 - 165235_6, 2024/03
被引用回数:0 パーセンタイル:0.19(Instruments & Instrumentation)原子炉のケーブルの絶縁材は、他の種類の設備における条件と比較して、混合条件(高温、放射線、圧力、湿度、過酷な環境)にさらされ、同時に長期間(約40-50年)の性能特性を維持する必要がある。このような条件下での照射の結果、ケーブル絶縁体の電気的特性は劣化し、電流損失が増大する。これは、放射線によって絶縁体に電荷が誘導されるためである。WWR-K原子炉では、2種類の無機絶縁材(MgOとAlO)を使用した信号ケーブルの耐放射線性に関する研究が開始された。これらの研究の一環として、2種類の無機絶縁材を使用した信号ケーブルの混合運転条件(放射線場と高温)における挙動について、新たな実験データを取得する。ケーブルに10cmまでの高速中性子を照射する予定である。照射温度は(50050)Cである。信号ケーブルの絶縁体の電気特性の劣化の研究は、リアルタイムで実施される。このために、実験装置の特別な設計と電気特性の炉内測定技術が開発された。本論文では、キャプセル設計の概略、キャプセル設計開発のための複雑な計算結果、予想される中性子フルエンス、鋼材中のdpa、炉内電気特性測定技術、今後の作業計画を示す。目標中性子フルエンスに到達するまでのケーブル照射時間は、約100日となる。本研究は、国際科学技術センターの助成を受けて実施されている。
平田 悠歩; 甲斐 健師; 小川 達彦; 松谷 悠佑; 佐藤 達彦
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 547, p.165183_1 - 165183_7, 2024/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Instruments & Instrumentation)蛍光体の粒子線に対する発光効率は消光効果により低下することが知られている。蛍光体検出器を用いて正確な線量分布を得るためには、消光効果のメカニズムを理解することが不可欠である。本研究では、PHITSに実装された任意の物質に対する飛跡構造解析モードに基づいて蛍光体の発光強度を推定する新しいモデルを開発した。開発したモデルにより、BaFBr検出器の消光効果のシミュレーションが可能となり、その結果を対応する測定データと比較することにより検証した。このモデルは、様々なの蛍光体検出器の開発に貢献することが期待される。
石川 法人; 福田 将眞; 中嶋 徹; 小河 浩晃; 藤村 由希; 田口 富嗣*
no journal, ,
天然ジルコニアと高純度の人工ジルコニアに対して、高速重イオンを照射し、照射に伴って形成されたナノ構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。天然ジルコニア、人工ジルコニアともに、ナノヒロックと呼ばれる表面構造が観察でき、どちらも直径が10nm程度の大きさであることが分かった。この寸法は高速重イオン照射によって溶融する領域の寸法と同程度であり、照射によって一旦は局所的に溶融した痕跡であると推定できる。一方で、天然ジルコニアに形成された内部損傷(イオントラック)の断面形状が長方形であることが確認できた。このことは、短い時間の間溶融した後に冷却する間に再結晶化が起こり、長方形の領域だけ損傷として残ったと解釈できる。一方で、人工ジルコニアの方は、形状がぼやけており、長方形とは定義できない形状になっていた。内部損傷の形状の違いの理由は未だ不明であるが、再結晶化のしやすさを左右する要素(試料のサイズや添加元素など)を考慮する必要性があると考えられる。
大久保 成彰; 友部 政勝*; 石川 法人
no journal, ,
原子力分野で使用されるセラミックス機能材料に関して、高エネルギー重イオンを高線量まで照射し、表面の損傷形態を調べた。鉄鋼材料は水等の冷却材環境で長期間使用されると、表面が酸化する。そこで、原子力機構のタンデム加速器により、鉄の表面酸化物の一つであるFeOに、鉄イオンを高線量まで照射し、表面及び微細組織への照射影響を調べた。その結果、照射された表面は、波紋(リップル)とセル構造を呈した。照射イオンがほぼ貫通する試料厚さの場合、照射面と裏面の両面に波紋構造が観察された。また、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所のTIARA施設にて、約1/10のエネルギーにてNiイオンをCeOに照射した場合、表面のみにリップルとセル構造が観察され、これら表面形態は、照射角度や照射線量によって変化した。通常のスパッタリングは、keV程度の照射によって弾性衝突的に引き起こされ、表面形態はマクロには滑らかである。しかし、本研究でのリップル等はSEMレベルで観察され、高エネルギーの電子的エネルギー付与が、激しい表面スパッタリングを引き起こしたことを示す。また、断面TEM観察により、電子的エネルギー付与の高い表面では非晶質化が生じていることが鉄酸化物で初めて明らかになった。
石川 法人; 田口 富嗣*; Toimil-Molares, M. E.*; Trautmann, C.*; 小河 浩晃
no journal, ,
高速重イオン照射した結晶性SiOにおいて、イオントラック損傷が形成されることが知られている。これまでの透過型電子顕微鏡(TEM)を利用した観察結果によると、そのイオントラックの内部は均一構造であるように見える。しかしながら、近年の分子動力学法による計算結果によると、そのイオントラックは密度的には均一な構造ではなく、同心構造をしており、中心部は低密度コアを形成していることが予測された。実験では、このような同心円構造を観察されたことがなく、計算の妥当性を検証できずにいた。本研究では、極薄の結晶性SiOを試料として採用することによって、同心構造のイオントラックをTEMで観察することに成功した。イオントラックの中心部の低密度コアについても、観察することができた。一方で、結晶質ではない非晶質SiOにおいても、これまでの分子動力学法による計算で、同様の低密度コアを有する同心円構造が予測されていた。小角X線散乱法による分析ではその存在がすでに確かめられているものの、TEMでの直接的な観察例はない。今回、試料を工夫して、極薄の非晶質SiOを採用することによって、非晶質SiOにおけるイオントラックの低密度コアを観察すること初めて成功した。
松村 大樹; 岡崎 宏之*; 出崎 亮*; 石井 賢司*; 八巻 徹也*
no journal, ,
X-ray absorption fine structure (XAFS) is a unique technique for the study of functional materials including metal nanoparticle catalysts. In situ observation by XAFS technique has been widely applied due to the long attenuation length of hard X-ray. However, the observation of XAFS spectra for light element is not easy because the X-ray absorption energy of light element is located at the soft X-ray region whose attenuation length is the order of nm size. X-ray Raman spectroscopy includes the information of XAFS spectra at soft X-ray region, though hard X-ray is employed for both probe and detection. We have applied X-ray Raman spectroscopy technique for the study of ion beam irradiation effect for glassy carbons. The ion beam irradiation enhances the electrocatalytic activity for Pt/C catalysts. We have demonstrated the availability of X-ray Raman spectra for the study of correlation between catalysis and structure for the irradiated carbon materials.